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コラム

畠 卓子

文書配信システムの状況(POSTA)

1.はじめに

今日インターネットの急速な普及は、ビジネスの世界を大きく変えつつある。平成11年度通信白書によれば、10年度におけるインターネット利用者数は、約1,700万人と推計され、また平成10年度通信利用動向調査によれば、インターネット世帯普及率は11.0%(対前年度比4.6ポイント増)、事業所普及率は19.2%(対前年度比6.9ポイント増)、企業普及率は80.0%(対前年度比11.8ポイント増)に達しており、社会の様々な局面でインターネットが浸透しつつある。

また、1999年2月に開始したNTTドコモのiモードによる携帯電話インターネット接続サービスは、その多様性と携帯電話ならではの利便性により加入者が急増している。(2000年3月15日時点で加入者は 500万人を突破)これにより、さらにインターネットの普及に拍車がかかるものと予測される。

この普及にともない、ビジネス文書の送信や商取引の決済などの実務に対するインターネットの適用が盛んに進められている。しかし、「早い、安い、便利」を実現したインターネットではあるが、ビジネスの世界では、商取引にかかわる重要なドキュメント(書類)や機密性の高いドキュメントの送信や配信は、いまだに郵送で行われることが殆どと言えよう。そこには、管理組織が特定されないというインターネットの特性を背景としたネットワーク・セキュリティの問題に加えて、送信したものが相手に届いたかどうかが分からないという、基本的な問題も指摘される。読者の中にも、インターネットによる電子メールで送信後に、着信を確認するための電話をした経験を一度はお持ちではないだろうか。

つまり、電子メールには郵便の「書留」、「配達証明」に相当する機能がなかったことが大きい。また宅配業者が行っているような、発送した荷物が今どこにあるかというような運送の状況を知る送達確認機能(トラッキング機能)をインターネットに期待することはできなかったのである。

今回は、当社における電子化文書への経験を踏まえつつ、ドキュメントの電子化には避けて通れない、ネットワーク社会に求められる「配信」機構とは何かについて探ってみたい。

2.郵便システムの発達と電子メール

2.1.郵便システムの発達

郵便は飛脚や駅伝制度として古代から存在していたが、近代的形態をとったのは16世紀に神聖ローマ帝国で始まったタクシス家による郵便事業以来のこととされる。特に、切手利用による料金前納方式と全国均一料金制は、1840年ローランド ヒルにより英国で実施されてから急速に各国に普及し、現在では万国郵便連合(Universal Postal Union)を通じて世界中に達している。日本でも大化の改新の時に既に駅制がしかれて公用文の送達がなされ、その後は公用飛脚の制が整い、江戸時代には町飛脚があらわれて民間の通信も扱われていたとされる。

明治3年(1870年)、郵便の創設者である前島密は、東京・京都間の公文書運送費、つまり当時の飛脚屋に支払っていた金額の大きさに目をとめ、イギリスに範をとって「新式郵便」創設を立案した。これが郵便局ネットワーク形成の出発点であった。この立案のもと、近代国家に必要不可欠な基礎的通信手段である郵便制度が国営で始められたのは明治4年(1871年)4月20日であり、現在ではこの日を逓信記念日としている。当時の国の厳しい財政事情の下、低コストかつ迅速に郵便ネットワークを形成するため、地方の名家に自発的な局舎の提供を求め、積極的に民間の力を活用した。すなわち郵便局は国が民間の力を活用した組織であり、今日で言うPFI事業(新しい社会資本整備方策の考え方)として推進された点は、明治初期の先達の眼に敬服するばかりである。

こうして設置された郵便局は、現在では、全国24600局にのぼり、過疎地域を含めた、3232市町村すべてに設置されている。郵便局ネットワークの現状を数量的に示すと、郵便は、全国16万6千のポスト等から差し出され7000万通が毎日輸送ネットワークに乗っていることになる。

現在、郵便局のサービスは多義にわたっているが、郵便システムの機能としては、相手に「はがき」や「普通郵便」を届けるという基本機能のほかに、郵便局を通過したことを証明する機能(消印機能)、そして相手に届いたことを証明する機能(配達証明や内容証明)、さらには大切な郵便物を確実に届ける機能(書留)や速く送る機能(速達)など各種のサービスが提供されている。

私たちが、これらのサービスを安心して教授できる背景には、公共事業としての性格のもとに、郵便法によって事業の運営、郵便の種類・料金およびその利用と取扱いなどの基本的事項が規定されているというころが大きいといえる。

2.2.電子メールシステム

多くの文献に明らかなように、インターネットは、特定の事業者のもとに形成されたネットワークではなく、個々に構成されたネットワークが、相互につながることによって、国境を超え、組織を超えて構成された自発的なネットワークとしての性格を持つ。この自由度の高い、自発的なネットワークとしての特性が、これまでの企業内ネットワーク・特定関係者を結んだ目的指向型ネットワークとしてではなく、各々の利用者の意志によって自由な発想のもとに「新たなネットワークの使い方」を誘導し、さまざまな機構を生み出しつつある。特に、WEB機構の出現は、利用者の爆発的拡大をもたらすと同時に、利用機構のさまざまな展開・進化をもたらした。インターネットの上では、新しい機構が毎日のように出現し、従来の社会経済構造をネットワーク上の新しい機構へと置き換えようとしている。電子政府しかりであり、遠隔医療しかりである。

インターネットの当初より利用されはじめた電子メールは、もはや日常的なツールである。しかし電子メールには様々な利点がある一方で欠点も存在する。電子メールは、ネットワークを経由してメッセージやディジタルデータを即座に交換できるツールであり、しかも郵便に比べてはるかに安いコストで送受信ができる点が利点としてあげられる。ただし、送受信されるデータの信頼性・監査性・遡及追跡といった面は遠く郵便に及ばないともいえる。特に特定管理者のもとになく、特定の国家に帰属するものでもないことは、従来の法制度の枠組みにあてはまらないものであり、利用責任は全て利用者が配慮しなければならないこととされている。前述したような郵便法に対応する法制がないため、監査証拠・証跡といった面で、商取引面からは大きな問題を抱えることとなる。

つまり、郵便がここまで発達し普及したのは制度的に「国営」「全国均一料金制」「郵便切手」であった事が大きく寄与しており、また、はがきや普通郵便に加えて、消印機能、配達証明、内容証明、書留など機能分化と進展が、長い歴史をかけて実現されてきたものといえる。電子メールその他のネットワーク上の情報交換手段を、商取引や公共的な利用に応用する場合にも、郵便同様の制度ないし仕組みが必要とされることとなる。つまり、これからは郵便制度と同じような発展を遂げ、インターネットが社会に不可欠な存在として定着してゆくことが想定される。

しかし、郵便制度の仕組みをそのまま電子メールに当てはめようとすることには問題がある。インターネットの元来の性格であるパブリックな機構、すなわち運用者が特定されない性格は、民間の事業であっても公共性を損なわないサービスが提供できる前提があれば、むしろ「国営」事業にはなじみにくいことにもつながる。

一方、今日の近代郵便の原点とされる情報のユニバーサルアクセスの保証という原則に基づく、全国均一料金は、民間事業といえども引き継がれることになるだろう。ただし、実際のシステム資源やネットワークへの負荷量を考慮した場合においては、従来の郵便物で適用されてきた重量や封筒の大きさなどに準じた料金体系とは異なり、文字数(容量)やその配信にかけるセキュリティの強度などを考慮に入れた新しい料金体系が適用されることが予想される。

3.ネットワーク上における配信機構の整備と取り組み

3.1.電子切手事業

お手元の郵便切手をご覧戴くと、そこには「日本郵便」と国名が明記されている。国名が明示されない切手があることをご存知であろうか?英国の切手がそうである。すなわち、現在の国際郵便制度は、英国の郵便機構を基盤に世界に広がった経緯を持つことの証と言える。一方、インターネットのドメインにもわれわれは”.jp”と言う国をあらわすサフィックスを用いる。インターネット発祥の国、米国は”.us”とはしていない。郵便制度が英国の制度を国際的に敷衍した制度とすれば、インターネットもまた米国の機構を国際的に敷衍したことの証と言えよう。

郵便制度における郵便切手は郵便料金を支払った証として郵便物に貼り付けられる印紙であるが、実際に郵便物が送られるときには該当する郵便局において切手に消印が押されることになる。この消印は切手が使用された証明であると同時に、何時・何処の郵便局が受け付けたという証明でもあり、更に書留郵便においては、郵便物の引受から配達までの全送達経路を記録し,事故があった場合には差出人が申し出た損害要償額の範囲内でその実損額が弁償される。これも経路証明の消印と考えれば、郵便切手と消印の組み合わせによる現行の郵便システムは合理的な形態を取っているといえる。

ネットワークの進展を背景に、米国では1997年あたりから電子切手の実用化が進展しつつある。郵便計測機の大手メーカのPitneyBowes(http://www.pitneybowes.com)やベンチャー企業E-Stamp(http//www.estamp.com)、PC Stamp(http//www.pcstamp.com)は米国郵政局(USPS)から正式に郵便切手販売の許可を得て販売を始めている。この電子切手は、既存のPCとプリンターを使って、封筒や宛名ラベルなどに直接印字することができる。この切手は、USPS専用のバーコードから成るタイプのもので、配達に必要な情報を含むため、郵便局の住所マッチング・システムで自動仕分けにかけられる。また、印刷時に日付や配達先ZIPコードなども一括印字されるので、配達プロセスを大幅に短縮できるメリットも併せ持っている。ユーザーは専用ソフトで切手販売業者のサーバに接続し、メニューに添って宛先や配達クラス、郵便物の重量などを入力すると、郵便料金が自動計算され、その金額分の切手が作成される。PC画面では、この切手と宛名が自動挿入された封筒または宛名ラベルなどのイメージを確認し、「プリント」ボタンをクリックし、クレジットカードの電子決済を済ますと、そのイメージのまま印刷される。ユーザーに対しては、セキュリティのため識別番号が発行され、盗用を防ぐと同時に、買いだめした切手を後から使えるようにもなっている。また、このシステムの購入価格も300ドル程度であり、今日多数形成されつつある米国のSOHO企業群を含めてターゲットとしている。

但し、これは現実の切手の情報をインターネット経由で購入し、郵便物には購入した切手情報をプリンターを使用して印刷して貼りつけるか、直接印字するものであり、電子メールの電子切手・電子消印とは意味が異なっている。しかしながら、郵便の配送業務の省力化スピード化には大きく貢献することが想定される。USPSでは郵便切手販売という、郵政事業の根幹となる部分を第三者に委託し、情報の提供者に徹することにより、新しい郵便事業への方途を探っているとも言える。

3.2.電子消印

郵便切手における消印は切手に対する使用済みの意味であり、郵便発信局の名称と日付が押印される。これを電子メールに当てはめると次のような機能を持つ事が考えられる。

1)時刻証明
当事者以外(第三者による)が付与する日付時刻であり、タイムスタンプを手段として利用する。

2)内容存在証明
誰が、何時、誰に対して、どのような内容の電子(デジタル)情報を出したかを第三者に証明するものである。 3)到達確認証明

送信者の電子文書(デジタル文書)が間違いなく受信者に配達されたことを証明するものである。

このように、第三者機関による電子メールに対する各種の証明発行機能によって、従来のポイントtoポイントでの私的な情報送信手段としての電子メールが、社会的な証拠能力を備えた情報交換手段として新たな立場を得ることが予想される。この結果、電子メールの利便性をそのままに活かしつつ、電子商取引(Electronic Commerce)への利用に際して新たな可能性を示唆するものと思われる。

4.これから求められる配信機構(POSTA)

当社は電子文書関連技術を入力、編集、蓄積、表示・印刷、配信といった5つの要素でとらえ、それぞれについての取り組みはこれまでの連載において記述してきているところである。「配信」についても、それなりに取り組んできたところであったが、機会を得て、米国のベンチャー企業であるタンブルウィードコミュニケーションズ社(TSC社)http://www.tumbleweed.comと接触を持つことになった。同社は、先頃NASDAQに上場し、パブリックカンパニとして認められるに至ったが、当時は30名たらずの陣容であった。このTSC社のソフトウェアは、今ではIME(Integrated Messaging Exchange)と正式名称を変えているが、当時はPOSTAとよんでいた。

同社の副社長のマーク・パストアは、POSTAを生んだ背景を以下のように日経マルチメディア誌に答えている。「我々が前提としているのは実世界の配達サービス。書類を送る手段は数限りなくある。普通の郵便から、書留、オーバーナイト配達サービスを使う場合もあるし、バイク配送を頼むかもしれない。もちろん必要ならファックスで送るというオプションもある。私たちはインターネットの世界にこれらと同じくらい広いニーズがあると考えている。電子メールは普通の郵便の役割を果たしているかもしれない。しかしインターネットの世界にはそれより重要な書類を安全で確実に配送する手段がなかった。重要なビジネス用の書類の多くは、今も紙のかたちでやりとりされているのが実状だ。私たちはこうしたニーズに応えられる仕組みをインターネット上で実現したかった。その技術がPOSTAだ。」

4.1.POSTAの仕組み

POSTAはサーバをベースにしたソリューションである。WEBサーバとメールサーバの機能を併せもったPOSTAサーバとクライアントの仕組みで動いている。

POSTAサーバは各企業内、またはインターネットサービスプロバイダーなどに設置され、インターネットに接続される。POSTAサーバ内では、電子メールやWebサーバ、データベース、セキュリティなどのソフト群が協調して動作している。

以下に手順を追って、POSTAの動作手順を説明する。

図1は、POSTAの全体図である。POSTAサーバと送信側、受信側の各クライアントはインターネットで接続されて、送信と受信はすべてPOSTAサーバを介して行われるため、送信者がドキュメントを送信した後にPOSTAサーバにアクセスすることにより、後に述べる追跡(トラッキング)を行うことができる。

まず送信者は、WebブラウザでPOSTAサーバにログインするか、もしくは専用のクライアント用ソフト(POSTAデスクトップ)でサーバにログインし、受信者のメールアドレスと送信するドキュメントファイルをPOSTAサーバにアップロードする。①

すると、POSTAサーバは、ドキュメントファイルに関係するあらゆる情報(送信日時、ドキュメントファイルの容量、受信日時など)をリレーショナルデータベースで管理する。②

POSTAサーバは受信者に対し、電子メールで、ドキュメントが届いているというメッセージとドキュメントのありかを知らせる独自のURLを送信する。③ 

受信者の方は、電子メールに記載された独自のURL(POSTAサーバに保管されている各々のファイルのIDにあたる)をクリックして、POSTAサーバにアクセスする。④

立ち上がった画面で受信するファイル名をクリックするとPOSTAサーバから該当ドキュメントが送信され、そのドキュメントのアプリケーションが立ち上がる。受信者は送られてきたファイルを見るか、保存するかをクリックして選択する。⑤

送信者はドキュメントを送信後、POSTAサーバから発信されたドキュメントが受信者に届いたのかいなかの確認追跡(トラッキング)をすることができる。⑥

トラッキング画面ではドキュメントの配信の状況を一覧することができ、さらに「デリバリー詳細」の画面に進めば、受信者側にドキュメントが届けられた日時や、伝送上の問題がインターネット上のどこのステップで発生したかを知ることができる。 図2

この仕組みから、ドキュメントファイルの配信に、電子メールによる添付を行っていないことや配信にはHTTP、電子メールではSMTPといった標準的なプロトコルを使用することで、受信者には特別なソフトウェアをインストールする必要はなく、電子メールアドレスとWebブラウザのみあればよいことがご理解頂けると思う。

4.2.POSTAのセキュリティ

POSTAのセキュリティ機能は発信するドキュメントの重要性に応じて、何段かに機能を設定することができる。

POSTAでは、PK(Public Key)に基づく証明書で送信者を認証している。送信者からPOSTAサーバまでの間とPOSTAサーバから受信者までの間は、SSL(Secure Sockets Layer)による暗号化で通信の安全性を確保する。送信者と受信者の相互の認証に関しては、必要に応じてPKを使った暗号化に基づいて証明できる。

現在のバージョンであるIME3.1では、標準セキュリティを設定すると、POSTAサーバから受信者の間はSSL接続となり、POSTAサーバに保管されている間、ドキュメントはRSA方式により暗号化された状態で保管される。高セキュリティを設定すると、標準セキュリティの機能に加えて、パスワードによる本人認証を行い、受信者はパスワードを入力しない限り、ドキュメントにアクセスすることはできない。このように、セキュリティについては、ドキュメントの重要度に応じた設定を可能にしている。

4.3.送信オプション

POSTAには上記のセキュリティ設定のほかに、必要に応じて、次のような設定が行える。

「優先度」でデリバリーの優先順位を設定することができる。これにより、POSTAサーバの中でのファイルを送信する順位が決まる。例えば、「速」を指定すると、送信待ちになっているほかのファイルより先に送信されるようになる。

「受信のお知らせ」を設定することにより、受信者が配達を受け取ったときや、電子メールのアドレスが違うなどでデリバリーが失敗した際に送信者に通知電子メールが送られる。

「通知予約」は、通知メールを受信者に配達する日時を指定予約することができる。

「パッケージ有効期限」を設定することで、送信するドキュメントをサーバ内に保管する期限を設定することができる。この期限を過ぎると、受信者はサーバから該当のドキュメントを取り出すことができなくなる。

「通知予約」は、通知メールを受信者に配達する日時を指定することができる。

4.4. POSTAの適用分野

米国では、書類配達・物流大手のUPS(United Parcel Service)が、インターネットによる文書配信サービスにPOSTAを採用している。また、ベルギーに本拠地があるIPC(International Post Corporation)は、現在21ヶ国が参加している国際郵便のための検討組織であるが、このうちフランス、カナダ、アメリカにおいてすでにPOSTAが採用されている模様である。(その他の情報については、http://www.tumbleweed.com/を参照)

また当社においては、有料で論文などのドキュメントを配信している科学技技術振興事業団殿や、金融情報配信している大和証券殿にすでにご採用頂いている。

そして、今後ECが定着してくれば、POSTAのような配信技術はさらに重要になってくるものと思われるのである。

5.おわりに

当社がテーマとして取り組んでいる、本連載の主題でもある「ドキュメントの電子化」とは、最終的には、電子化されたドキュメントがネットワークを介して交換され、共有され、また行政活動や企業の商取引構造に利用されていくことが重要とされる。

従来の紙ドキュメントと同様に、電子化されたドキュメントが、その利便性を発揮しつつ、これらの社会的な機構に適用されていくためには、郵便制度をはじめとして紙ドキュメントを取り扱ってきた機構が備える特性を踏襲していくことが必要となる。すなわち、ネットワークを介した情報の送達においても、郵便制度上に実現されている消印機能に相当するものを実現すると同時に、書留扱いや、配達証明、内容証明郵便に相当する機構が必要である。

この意味で、ドキュメントの電子化に際しては、そのオーサリングやデータベース化などと同じように、もしくはそれ以上に、ネットワークを介したドキュメントの配信をどのように実現するかが重要となり、ある意味で、今後のB2BコマースやB2Cコマースの普及のカギを握っているとも捉えられる。

本稿で紹介したPOSTA(IME)は、これまで、電子メールかWEB機構のいずれかによるものとされたドキュメント配信手段に新しい方途を提供したものとして注目される。当社が知る範囲においても、POSTA以外にインターネットによる配信技術は多数出現している。しかし、これらのツールのみをもってドキュメント配信に関わる全ての課題を解決するものでも決してない。ドキュメント配信にまつわる同一性の保証や非改竄性の保証、企業会計における外部・内部監査に対応する証跡確保の課題、また配信に伴って発生する可能性があるウイルスの問題に対する対処など、単純にドキュメントの配信という限られた領域にあっても、多くの課題を考慮しなければならない。さらに、従来の郵便制度との関係で言えば、郵便事業自体の電子化・ネットワーク化は必然の趨勢でもあり、電子化時代にふさわしい国際郵便制度の検討も必要な時を迎えている。

電子的帳簿保存法や、行政における情報公開法など、電子化されたドキュメントの社会的利用に関わる法制度が次々と整備されつつあり、2001年4月に施行予定の電子署名・認証法においては、電子化されたドキュメントに法的な意味での証拠能力を持たせることが計画されている。今後のネットワーク利用の高度化に向けては、ドキュメント交換機構の技術的課題に加え、社会経済的な意味での運営機構や、運営方法、果たすべき機能について、真剣に取り組まなければならない時代を迎えていると考える。



参考資料

[1]:
平成11年版 通信白書
http://www.mpt.go.jp/policyreports/japanese/papers/99wp/99wp-0-index.html
[2]:
「郵便局改革ビジョン」郵政審議会編
[3]:
ECOM 電子商取引実証推進協議会
http://www.ecom.or.jp/
[4]:
通商産業省「電子署名・認証に関する法制度の整備について」
http://www.miti.go.jp/feedback-j/i91119aj.html
[5]:
北米の電子公証関連サービス事業の市場調査
http://www.ecom.or.jp/about_wg/wg15/9-itaku/itaku-list.htm
[6]:
IPC ( International Post Corporation)
http://www.ipc.be.
[7]:
「トレンド/US」日経マルチメディア 1998年9月号

畠 卓子(はた・たかこ)

ディスクロージャー・イノベーション株式会社

インターネットの普及と電子メールの普及により、まずインフラが整いました。そしてインターネットはビジネス上の重要な文書のやりとりには使えないという常識?が定着してきました。そこで、ようやく配信技術や法整備の必要性が認識されるに至ったと考えています。



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